レーザーの歴史 その壱 レーザー発想の誕生と黎明期
今日から数日間にわたって、自分の専門でもあるレーザーの歴史についてこのブログで触れたいと思います。今日はレーザーの理論の誕生と、脱毛レーザーについてです。
レーザー発想の誕生と黎明期
ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインが1920年代半ばに行った研究である「誘導放出の研究」という論文がレーザー発想の原点です。
ここ数十年は、皮膚科領域だけ ではなく、外科手術などの他の医学領域や、工学部門でレーザーが活躍する時代となりました。いわばレーザーの発展期と言えます。
1954年に、C. H. Townes (タウンズ)とSchawlowらが、電波の一種のマイクロ波を強力にまっすぐに送り出す装置である「アンモニア分子線メーザー」を開発しました。
LASER(=Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)の最初のLはLightではなくてM (Microwave) でした。つまり1950年代は、“L”aserではなくて “M”aserだったのです。
1960年にはアメリカのT.H.メイマンがルビーの結晶を使い、光を強力に直線的に送り出すレーザー発振装置を開発しました。これが近代レーザーの発祥です。
1960年代にはレオン・ゴールドマンが、世界初のルビーレーザーで子供の皮膚の血管腫の治療が行いました。
彼はこの功績から「レーザー治療の父」と呼ばれています。
レーザー脱毛器の誕生 1983年、ハーバード大学皮膚科ウェルマン皮膚研究所のロックス・アンダソンとJ.A.パリッシュが「Selective Photothermolysis(選択的光熱融解理論)」という論文を著名な科学雑誌サイエンスにアクセプト(採用)させました。
(Anderson & Parrish, Selective Photothermolysis, Science, vol.220, page 524-7)
この理論は、「(レーザー光の)波長、光の照射継続時間(パルス幅)、単位面積あたりに照射する光エネルギー量の適切な組み合わせによって、生体の限定された領域に光熱分解を生じさせることができる」 というものでした。
○光の波長(Wavelength)
○照射持続時間(Pulse dilation)
○単位面積当たりのエネルギー量(Fluence)の
3つの要素を調節して照射すると特定の色素、細胞、そして細胞内構築物を選んで、融解する、もしくは組織の急速な温度上昇に起因するショックウェーブの機械的な力で組織を破壊することができるという理論です。
この論文では、標的色素のうち、微小血管のオキシヘモグロビンと、メラノゾームのメラニンの二つの色素について特に詳しい記載があります。
この実験の際に、ロックス・アンダソンのチームが、レーザーを使用して目の周りのアザの治療を行っていた時に、眉毛が生えてこなくなったという事実に着目しました。この事実から、「レーザーを使っての永久脱毛の可能性」を見出したとされています。
そして1996年、M.グロスマンによって、ルビーレーザーを用いた 世界初の脱毛機が誕生する運びとなったのです。このレーザーは、皮膚表皮にメラニンが少ない白人にのみ対応可能で、有色人種の皮膚の表面に含まれるメラニン色素に過剰反応してしまい、光が毛根まで届かなかったり表皮に火傷を負わせてしまうなどの結果を招きました。
世界最先端のレーザー情報がわかる
| 固定リンク
「レーザーの歴史」カテゴリの記事
- 2025年までに起こりうる、レーザー治療の大きな進化について(2014.05.03)
- レーザーの歴史 その壱 レーザー発想の誕生と黎明期 (2007.05.28)
- レーザー・光治療の歴史更新(2011.12.26)
- ■EADV 2011in Lisbon,Portugal番外編 手術の傷跡を目立たなくするレーザー機器EKKYO(2011.11.08)
- 2011年レーザー治療機器総括その6 痩身と脂肪溶解(2011.10.20)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント