レーザーの歴史 その五 スキンリジュビネーション(肌質の若返り)のためのレーザー
スキンリジュビネーション(肌質の若返り)のためのレーザー
もともとレーザー光線には、肌の下のメラニンやコラーゲン、ヘモグロビン、水に作用する効果があります。IPLが開発されて、施術後すぐにメイクをして帰れるという「non-ablative skin resurfacing」の治療が始まって以来、レーザーを低いパワーで顔全体に照射することで、スキンリジュビネーション(肌質の若返り)を行なう治療が始まりました。この治療法は、Laser facial と呼ばれています。
Laser facialは通常のシミを取るレーザーに比べて低出力ですが、顔全体に数百ショットの照射を施すことで、痛みなく肌の茶色いシミや赤みが減少し、さらにテクスチャーでも「肌の張り」が出るため、非常に人気のある施術になりました。CUTERA社のジェネシスや、CYNOSURE社のEliteなどを使用したロングパルスのレーザーフェイシャルは定評があります。
2002年にJMEC社が日本にディストリビュートしたMAX engineering(現Lutronic)社のQスイッチNd:YAGレーザーであるSPECTRA VRM を使用し、マックスピールと呼ばれる黒いカーボンローションを使用したレーザーピーリングを紹介しました。 この手法はGoldberg が Dermatol Surg という雑誌に2001年に発表した方法を参考に開発されました。当初は世界的なスタンダードだったQスイッチNd:YAGレーザーはHOYA社のMEDLITEという製品でしたが、もともと、QスイッチNd:YAGレーザーはアメリカで刺青をとるために開発されたものでしたので、それに適したように、安定した出力と5mmのスポット径、さらにビームプロファイルが山のような形をしたガルシアンと呼ばれるモードになっていました。
レーザーピールという観点では、SPECTRA VRMには、MEDLITEを上回る性能が二つありました。ひとつは照射径の大きさが大きいこと。もう1つはレーザーのビームプロファイルがトップハットと言われる出力が均等なものであることでした。
レーザーのスポット(照射半径)に必要なエネルギーは、その半径の二乗に比例します。すなわち、7mm の径と5mmの径で、同じパワーの出力を求めたい場合、半径を二乗しますと一方では7×7=49 5×5で25=5mm径を7mm径にするためには機械的には、ほぼ倍(25を49に)の出力を持つ製品でなければならなかったのです。SPECTRA VRMは当時のQスイッチNd:YAGレーザーとしては珍しく、7mmの径の照射が可能でした。同時にレーザーのビームプロファイルも、先端のパワーが均一のトップハットのものでした。
このレーザーは当時としては「なすすべがない」と言われていた毛穴の治療に効果があったためマックスピールの名前で広まり、私も何編か論文を書かせていただきました。
| 固定リンク
「レーザーの歴史」カテゴリの記事
- 2025年までに起こりうる、レーザー治療の大きな進化について(2014.05.03)
- レーザーの歴史 その壱 レーザー発想の誕生と黎明期 (2007.05.28)
- レーザー・光治療の歴史更新(2011.12.26)
- ■EADV 2011in Lisbon,Portugal番外編 手術の傷跡を目立たなくするレーザー機器EKKYO(2011.11.08)
- 2011年レーザー治療機器総括その6 痩身と脂肪溶解(2011.10.20)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント