イタリア式ブランドビジネスの育て方
毎月購入している会員制で、ビジネス書誌のレジュメを掲載しているTOP POINTを読んでいて、この本が面白そうだったので買ってみました。
日本のモノ作りは、戦後、マスマーケットを前提とした
Q(品質)
C(コスト)
D(納期)
の“深化”をビジネスだと思い込み、感性がないがしろにされてきました。結果、市場では作っても売れないという現象が起こっているのです。
「日本初のラグジュアリーブランドを創造しよう」
という提案があちこちであがっていますが、これは機能(理性)一辺倒だったモノ作りの中に、美(感性)も取り入れるという、ビジネスモデルの転換をしなければならないということなのです。
1960年代後半に、東レは世界一細い繊維を開発しました。その細さは髪の毛の100分の1。この繊維をエクセーヌという名前で日本市場に投入したが、反応は良くなかった。そこで欧州市場の開拓に乗り出し、イタリアにアルカンターラ社を設立したのです。
この際に、
1)顧客をアッパー層に限定し、
2)価格は邦貨換算で二倍の価格をつけ、
3)価格を維持するために配給量を需要量より少なく抑え、市場を常に品不足の状態にする。
という販売戦略をとりました。
結果、アルカンターラ使いのコートなどはゲルマン系の国々では憧れのまとになりました。しかしながら、そのブームにも製品が市場で飽和状態になり、数年後には売り上げが減少し始めたのです。
東レでは、この危機を打開するためには販売価格を下げるしかないという考えが大勢であったのですが、イタリア人スタッフがこれに反対しました。価格を下げると需要層をロウアーミドルまで下げてしまい、汎用品となってしまうというのが理由なのです。
彼らの出してきた打開策は、顧客と価格は変えず、新しい用途を開発するというもの。家具と車のインテリア業界に参入することで、第二次、第三次アルカンターラブームを起こしたのです。すばらしいビジネスセンスですよね。
ここでわれわれが学ばなければならないのは、まさに「ラグジュアリーブランドビジネス」というものなのでしょう。イタリア人は、本当に消費者に喜んでもらえるものを作り出すためならコストをかけることを厭わない。
良いモノにはその価値をわかってくれる人がヨーロッパにはいるのです。
医療そして病院もブランディング・マーケティングが必要となる時代となりました。
クリニックFは、NY5番街やビバリーヒルズで出来るレーザー美容医療を、日本でリアルタイムに導入し、さらにそこに日本的なサービスを施しています。患者さんに新しい医療を日本的なパッケージに包んで提供していますが、それはマスマーケットに受け入れられるものではなく、顧客も自ずと限定されてしまう。
年に何回も海外の学会に行ったり、最新のレーザー機器を購入していくことは、コストがかかる作業です。それによって「販売価格」の下げ幅にも限度がある。
でも長い目で見ればこれで良いと思っています。
「世界で最高の技術を、僕のクリニックの患者さんには提供したい。」
こればかりは譲れない、僕のこだわりでもありますし、またこれこそが僕自身のブランド戦略である、と思っているからです。
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