アブ・シンベル大神殿の秘密
アブシンベル大神殿は、ラムセス二世が総力をあげて建てたものですが、実はある秘密があります。
ラムセス二世の誕生日である2月22日の朝一番で神殿に行くと、朝日が入口から60m奥にある至聖所の中に届くのです。僕がアブシンベル神殿に訪れたときは、偶然にもその3日前の、2月19日でしたので、聖なる日とほぼ同じ状態でこの現象を見ることができたのです。
朝一番に行くと、続々と世紀の瞬間を見に多くの人が集まり、神殿の中に向かってゆきます。砂漠の中ですので、早朝はとても寒い。ほぼ日本にいるときと変わらない服装で日の出を待ちます。
神殿の中で待っているうちに、いよいよ朝日が昇ってきました。期待が高まります。そしていよいよ日の出の時がやってきました。
暗い洞窟内に、一本の光が差し込み、奥の神体を照らすと、場内に歓声が上がります。
四人の像は、左から冥界神のプタハ神、テーベの守護神のアムン神、ラムセス二世、そして太陽神のラー神です。ラムセス二世は神々との間に並ぶことで、自らを神格化したのです。
22日にはラムセス二世の像を中心にラー神とアムン神が朝日に照らされます。プタハ神は冥界の王ですので、朝日が差し込むことはないのです。この日はラムセス二世を中心にラー神の半ばまで日が差し込みましたね。
古代の人の知恵に驚くばかりです。
実は、この神殿は1970年にナイル河に建設されたアスワンハイダムによってせき止められたナイル河の水脈(現ナセル湖)により水没の危機にありました。アスワンハイダムは定期的に洪水を起こすナイル河の天災を防ぐ目的で建設されたのです。
この人類の宝ともいえる貴重な文化遺産を残そうというユネスコの国際キャンペーンにより、アブシンベル神殿は寸分たがわず同じ方位のまま、60m高位にある現在の場所に移築されたのですが、この計画事体も壮大ですよね。
この国際キャンペーンが逆にアブシンベル神殿の知名度を世界的に上げたともいえるのです。移転工事の様子は博物館の写真に収められていましたが、興味深いものでしたよ。
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