痛みをとるレーザー
実はこのアンチエイジング歯科学会で、僕の次に招待講演をされたのが、このネルソン・マクガイヤー博士でした。
彼は工学や医学について勉強後、約12年前にアメリカはヴァージニア州に“USA LASER BIOTECH INC”という会社を立ち上げ、 治療用レーザーの開発をされているのです。
今回の学会の招待講演で彼が話したのは、痛みを軽減するレーザー治療器についてです。
痛みを軽減するレーザーは、僕がレーザー医療に興味を持ったきっかけにもなりました。
僕は医学生の時に最も興味を持った「痛み」についての研究をしたくて、初期研修に麻酔科を選択しました。今はアメリカのレーザー専門医を取得し、すっかりレーザー皮膚医療分野の医師になりましたが、日本ペインクリニック学会認定医でもある僕にとって、痛み治療はレーザーと並ぶ専門の一つです。
もう10年以上も前の話ですが、本郷の東大附属病院の痛み(ペインクリニック)外来で診療をしていた時に、スーパーライザーというLLLT(Low Level Laser Treatment 低出力レーザー機器)に出逢ったのです。
当時東大病院では、痛みの治療にレーザー機器を使用していたのです。
特殊な波長とパルス幅のレーザーを照射すると、細胞の中のミトコンドリアが活性化されます。
細胞のエネルギー発電所であるミトコンドリアの活性が上がると、細胞の働きが活発になるのです。
神経節の近くにこのレーザー光を照射すると、痛みを伝達する神経よりも太い神経が刺激されるので、痛みを伝達する神経がマスクされるのです。この理論は「ゲートコントロールセオリー」という名前で有名です。
今回のマクガイヤー博士は、自社でこの低出力レーザーを改良し、810nmの波長の半導体レーザーを連続モードをパルス式に変え、出力を高出力にしたものを開発したというわけです。
彼は医学に加えて工学的な知識も豊富。さらにお父さんが歴史学の大学教授ということもあってアカデミックな家系に育っているため、研究に対する姿勢は真摯そのもの。僕の父親も社会情報学を大学で教えていますので、環境も思考パターンも共通のものを感じました。
講演が終わってから懇親会が始まるまで待ち時間があったのですが、講師控室に二人きりの状態で、気づいたら2時間以上もレーザーについてディスカッションしていました。
この痛みを取るレーザーも、実際に使用してみなければ何も言えませんが、興味深い機器であることは確かですね。
また、彼の会社では、最近はパルス幅が極端に短いために、組織を傷害する放熱時間を考えずにピークパワーを上げることができるフェムト秒レーザーを利用して、CTやMRIのような断層写真が撮れる機器を開発しているのだそうです。
理論的には、フェムト秒のように短い時間であれば、体を突き抜けるレベルの高出力のレーザー光を、体内に熱影響を与えることなく照射することが可能なはずです。
この特殊なレーザーを使用して断層写真を撮ることができるようになれば、被爆の心配が全くないまま、非常に画質の良い断層写真を動画で取ることができるのです。
腸が詰まっていたり、肺に炎症があるのを、何度も写真を撮りなおすのではなくて、医者が目でその場で確認することができるのです。
医学が飛躍的に進歩することでしょう。
ヴァージニアにある彼の会社を、近々訪問できるようお互いに調整していますが、それはまた追ってこのブログで報告しますね。
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