ドラローシェ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
ロンドン・ナショナルギャラリーには、以前にも何度か来た事があります。
僕の好きなフェルメールが二点あることもありますが、他にも好きな絵がいくつもあり、また立地的にも気に入っているのです。
でもなぜかここ数年は、時間がなかったのか行く機会に恵まれていませんでした。
今回、何年かぶりに行こうと思ったそのきっかけは、去年人に薦められて読んだこちらの本。
朝日出版社から出ている中野京子さん著「怖い絵」シリーズ。
この本は本当におもしろく、絵が好きな人にもそうじゃない人にもお勧めしたい名著。絵の見方が変わるのです。その絵を見る視点も文章も素晴らしく、世界史好きにはたまらない本なのです。
この「怖い絵」に、何作かロンドン・ナショナルギャラリーにある絵が出てきます。
■ルーベンス作「パリスの審判」
■プロンツィーノ作「愛の寓意」
■ファン・エイク作「アルノルフィニ夫妻の肖像」
■ゲインズバラ作「アンドリューズ夫妻」
■ホガース作「グラハム家の子どもたち」
■マセイス作「醜い公爵夫人」
・・・
どの絵も以前に見た筈なのに、
「こういう見方があるのか!」
と、とても勉強になり、もう一度改めて見に行きたくなったのです。
トラファルガースクエアの目の前にあるロンドン・ナショナルギャラリーは、特別展以外は無料で見ることができます。
今回は、「怖い絵」にも出てくるデラローシェ作「レディ・ジェーン・グレイの肖像」とそれにちなんだ絵画が特別展として公開されていました。
16世紀のイギリスの女王というと、ブラッディメアリーとエリザベス一世が有名ですが、実はその前に9日間だけイギリス王位に担ぎ出された女性がいたのです。
それがこの「レディ・ジェーン・グレイ」
政権闘争の狭間でヘンリ7世の曾孫という血筋で王位継承闘争に担ぎ出されたのですが、在位わずか9日で、メアリによって王位をはく奪され、その後ロンドン塔に幽閉されて、わずか16歳で首を切られてしまいます。
彼女はラテン語やギリシャ語が堪能な非常に優秀な人物だったらしく、悲運の女王としてイギリス国内にもファンがたくさんいます。
夏目漱石の「倫敦塔」にも、彼女の記載がありますよね。
この絵がナショナルギャラリーに展示されているポール・ドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」。非常に大きな絵で、画中の人たちが等身大ぐらい。
特別展では、この絵と共に、この絵のためのデザイン画が多く展示されていました。
目の前で見ると、まずはジェーンが着ているドレスの美しさが目を引きます。上質な絹であることがわかり、その衣擦れの音が聞こえてきそうなほどリアルなのです。
枯れ草の中におそらくジェーンの前に処刑された人の滴った血や、ジェーンの処刑を前に、気を失ってしまった侍女、処刑人の持つ輝く斧の先など、ものすごい迫力で迫ってくるのです。
以前に何度かこのナショナルギャラリーで見たことがあり
「一度見ると忘れられない絵だなぁ」
・・・とその度に思っていましたが、改めてその迫力を目の当たりにしました。
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