シンガポールの医療政策
今回もシンガポールの医療政策について少し触れておきます。
シンガポールは、リー・クアンユー初代首相の強い指導力のもと、1980年代から
「医療は産業である」
という国家戦略で、国際競争力のある医療レベルを維持する政策を取ってきました。
「MOH Holding」という会社をシンガポール保健省の持ち株会社として設立させ、シンガポール国立大学病院をはじめ、国内にある13施設の国立病院と6施設の専門医療センターを所有運営しています。
シンガポール政府は、2003年より多額の予算を投じて「シンガポール医療構想」というキャンペーンを開催し、海外に対して医療サービスをプロモーションしてきました。
単なるイメージアップのためのプロモーションではありません。2012年に100万人規模の外国人患者を受け入れ、30億シンガポールドルの収入を得て、“外貨を稼ぐ”という「明確な目標」を掲げています。
その一方で、国民の医療機関へのアクセスを悪化させないため、外国人患者の受け入れ比率を8%以下に抑えているのです。
2010年現在でも、既に世界150カ国から外国人患者が来院して、「アジアにおける医療ハブ」としての役割を果たしつつありますが、政策として見事です。
シンガポールに来るたびに、日本もこうしたらいいのにな、と思います。きっと同じことを思うのは僕だけじゃないでしょう。
高度な医療レベルを持った日本ですから、もしも日本の医療を世界に向けてプロモーションすれば、必ずや外貨を稼ぐための、国の一つの基幹産業になります。
そのようにして得た外貨を、医療の質の向上に利用すればよいと思うのです。
この政策は、医療マーケットを国内に限定して考えている厚労省も参考にしていいのではないでしょうか?
研究面においても、1995年から各医療機関における質の評価を開始するとともに、アメリカのジョン・ホプキンス大学やスウェーデンのカロリンスカ大学などの、世界的な医学研究機関と提携し、研究の質的向上にも努めています。
さらに、諸外国より優秀な外国人医師や研究者をリクルートし、シンガポール国立大学の教授として赴任させています。しかも、優秀な海外の研究者たちが最も気にするであろう、子供の教育についても、シンガポールの高い教育水準を売り込むことによってサポートしているのです。
本当に、見事ですね。
シンガポール最終日は、晴天の中、朝からセントーサ島に学会に向かいました。
途中、シンガポール・ジェネラル・ホスピタルを車内から見学することにしました。
この施設、1821年に設立された組織なのですが、実際見ると驚くほど“巨大”です。
病棟の数も多く、車で回ってもいくつ棟があるのか、わからないぐらい。
人口密度の高い国なのに、こうした施設をきちんと作り上げるのは、素晴らしいですね。
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