「痛みと音楽を結びつけて考えようと、なぜ思ったんですか?」
と、先日とある集まりで聞かれました。
一言で言えば、「音楽を使って痛みをコントロールできること」「音楽を使って体のコンディショニングをすること」を医師の視点から伝えられたらいいな、と思っていました。
それから
「なぜ専門書ではなく、こういった軽いタッチのものを出されたのですか?」
とも良く聞かれます。
それは、日々の痛みに悩まれている、普通の方に手に取ってほしかったからです。あまり難しいことが書いてある本だと、読んでるだけで頭まで痛くなってしまいますよね(笑)。誰でも気軽に手に取ることが出来て、読んでも疲れない、そんな本を作りたかったのです。
実際、難しい言葉で文をつなげていくよりも、誰にとってもわかる言葉で文を作る方が、僕にとっては難しく、それでかなり時間もかかってしまいました。
それでも伝えたかったメッセージとは
医師として、「痛みとは体が発するSOSであり、それを軽視してはいけない」と思っていますが、その一方で、「軽視しない=すぐ鎮痛消炎薬を服用、時に必要以上に服用しすぎること」と考えている方が実に多く、その現状に警鐘を鳴らしたかったのです。
実際、病気のことを熟知しているはずの医師でも、ロキソニンのような鎮痛薬を白衣のポケットに入れて、勤務時間が長引くことやストレスによる頭痛を和らげるため、ラムネのようにそれを飲み下している人がいたりします。それだけ体のどこかが痛むことは、人間にとって大きなストレスであり、どんな手段を講じても一刻も早くその痛みを取り去ってしまいたい、そんなふうに思う気持ちもわかりますよね。
病名のつく痛みならば、改善の余地もありますが、こうした痛みの中には病名のつかない「不定愁訴」の範囲のものも多数あります。
それは一言で言えば、自律神経が「失調」までいかなくともバランスを崩してしまっている状態であり、また体に本来備わっている様々なポジティブなホルモンが分泌を妨げられている状態でもあります。
体には本来、体全体のバランスを取り、律する機能が備わっているはずなのですが、その機能がうまく作動していないことにより、痛みがなかなか収まらないのです。けれど、そこを考えず、対症療法的に鎮痛薬を大量に服用したところで、痛みはその場は収まっても改善されません。
むしろ、次に痛みが起きるとき、以前よりも強い痛み、以前よりも頻度高く現れる痛み、となってしまう場合すらあります。
それはきっとつらいことでしょう。
人間は、生きていれば必ずなんらかの痛みを抱えながら生きていく生き物です。それを踏まえた上で、痛みと上手に付き合っていく体、そして自律神経が正常に作動し、ホルモンの分泌もスムーズな体を、自分の意志で調整していくこと。
いつもの鎮痛薬にすぐ手を伸ばす前に、
「なぜ、こんなにも痛む体になってしまったのか? 自分のどこのバランスが崩れているのか?」
そういったことを立ち止まり、考えてもらうきっかけになれば・・・。そんなふうに思いました。
「痛み」には、一言でとてもまとめきれないくらい、様々な痛みがあると思うのですが、ひとつ言えるのは、それは体のどの部位・・・頭、首、肩、胸、背中、腹部、腕、足・・・どこであっても、またそれが、どんな由来で起きたものでも、さらには体ではなく心が痛むときでも
「痛い」
と人が感じるとき、それは脳の同じ部分に信号が送られている、ということ。
そして、体の痛みであっても、心の痛みであっても、やはり脳の同じ部分がその痛みを感知しているのです。
どんな痛みでもとれてしまう万能の薬があればいいのですが、実際なかなかそんな夢のような薬はありません。
この本はこんな感じで始まります。
本文より抜粋
素朴なギモン1
なぜ、クラシック音楽が痛みに効くの?
聴覚の刺激は時に痛みの刺激を超え、痛みをマスクする!
聴覚の刺激は、脳神経の一つである聴神経を介して大脳辺縁系といわれる脳の古い部分に大きな影響を与えます。日常の中で触れる音には様々なものがあ
りますが、脳に心地よい音をリズムやハーモニーにしてつなぎ合わせ、旋律(メロディ)となったひとつの音楽として「音を楽しむ」と、脳内の複雑な神経ネッ
トワークにある刺激が与えられます。
この刺激が、時に痛みの刺激を上回って、結果痛みの刺激をマスクしてしまう=痛みを感じにくくさせてしまうのです。
素朴なギモン2
音楽で治療もできるの?
医療の世界では、すでにたくさんの論文が発表され、成果を上げています!
音楽を聴いたり演奏したりすることによる生理的・心理的作用を、病気回復や健康向上のために役立てる治療法があります。それが「音楽療法」です。
音楽療法は、心身の障害や機能を回復させるため、すでにリハビリテーションや精神医療などで活用され、多くの成果を挙げています。
素朴なギモン3
この本で何ができるの?
痛み別・おすすめ曲紹介&CDつきで、すぐ実践できます!
「この痛みには、どういう傾向の曲を聴いたらいいか」を、科学的に分析して、わかりやすく解説。また、音楽に合わせて行なうといい運動なども紹介していま
す。さらに、CDつきで「痛みがとれる」を、すぐに実践へと移すことができます。
以上抜粋
70分の付属CDは、ヤマハミュージックメディアさんの持つ音源から選びましたが、かなりのクラシック好きの友人もいい演奏が多いとほめてくれました。
クラシック音楽好きの方にむしろ聴いて頂きたいと思いますよ。
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