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2011年4月22日 (金)

レーザー機器発振は、フェムト秒からアト秒の時代へ

昨日も工学部大学院の研究室に行ってきました。5月にアメリカはボルチモアで開催される学会発表の最終打ち合わせです。

毎回のことながら、レーザー工学技術の進歩には感心するのですが、今日は“光技術コーディネートジャーナル”として知られる専門誌「OPTRONICS」誌に寄稿された、東京大学物性研究所 先端分光研究所部門 板谷治郎准教授による「アト秒発振のできるレーザー機器」の話をご紹介しますね。

ちょっと難しいのですが、それでもはるかに難しい原文の内容をかなり易しく書いたつもりなので、どうぞお付き合いください。

シミなどを破壊する医療レーザー機器Qスイッチレーザーのパルス幅(照射時間)は、

○ナノ秒(10の-9乗)秒

の単位の発振が最も短いものとされています。

しかしながら、工学系のレーザー機器では

○ピコ秒(10の-12乗)秒

○フェムト秒(10の-15乗)秒

・・・と進化が進み、最近では

○アト秒(10の-18乗)秒

つまり、医療で使用されている最も短いナノ秒のパルス幅は(10億分の1)秒ですが、その秒数のさらに10億分の1という、想像を絶するほどの短い照射時間のレーザーを作ることができるのです。

フェムト秒のレーザーが開発されたことで、可視光線の光電場の振動の数周期に相当する数フェムトの超短パルスの発生を可能にし、ピコ秒からフェムト秒の時間のスケールで起こる物質内の「原子」の運動を直接観察することが可能になったことは、2006年のブログでもご報告しましたよね。

ここ数年の技術革新により、フェムト秒よりさらに1000分の1の、アト秒単位のパルス発振が可能になったことで、原子に比べて1000分の1以下の質量の「電子」のダイナミクスを観測することができるようになったのです。

これがどんなに偉大なことか、想像つきますか?

まずこの恩恵にあずかるのは、

◎最外殻電子軌道が同定できる

ということです。

Electronorbitals

約10年前に高強度レーザー光によって、分子の配向を操作できる技術が開発されました。高強度レーザーパルス光を配向をそろえたガス中に集光させると、

最外殻電子は

1)強レーザー場中でトンネルイオン化し

2)レーザー磁場で加速されたのちに

3)分子に再衝突して短調波の光を放出する

のです。

このデータを計時測定し、それをまさに生体CTスキャンの、コンピューター断層撮影の計算アルゴリズムを適応することで、原子または分子に特有な最外殻電子軌道の三次元形状を推定することができるのです。

理論では考えられてきたことですが、これが実際に測定できるなんて本当に画期的なことだと思い、感動しました。

また、こうしたアト秒ダイナミクスの代表例は、紫外線によるDNA損傷や、光合成などに関わる光化学反応です。

つまり、光化学反応をミクロに考えると、光励起(レイキ)によって電子が励起され、電荷が分子内を移動してゆきます。特に原子の結合に関与している電子が移動することによって電子配列の組み換えが引き起こされるのですが、この反応が実際に測定できる時代に入ったということなのです。

レーザー/光が生体に対してミクロでどのような変化をきたしているのか、それが測定できるとすると、物理学、生物学そして化学を融合させる、本当に画期的なことだと思います。

こうした最新の工学知識の知見を得ながら、今後の医療レーザー機器開発および、臨床治療がどのような方向に向かうのかを予想してゆくことは、興味深いことでもありますし、最先端レーザー医療にかかわる医師としては必要なことなのだと思いましたよ。

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