CLEO:2011 ボルチモア⑫ 統合失調症をテーマにしたミュージカル「next to normal」
シカゴに入った初日は移動日で特に予定を入れていませんでした。
街を歩いていると、昼の二時にぞろぞろと劇場に入る人たちが。
なにをやっているんだろう、と看板に目をやると
next to nomal と書いてあるではないですか。
劇場の受付で、当日券はありますか? と聞くと、運よく真ん中あたりの席がありましたので、そのまま観ることに。
このミュージカル「next to normal」は今年の1月にNYC ブロードウェイでの公演が終わった作品で、ちょっととした話題作でした。僕はブロードウェイでは観ることができなかったんですよね。
ミュージカルはたいてい明るい話題が多いのですが、これはちょっと暗い医学の話。
それも、統合失調症の話なのです。
父のダン、母のダイアナ、兄ゲイブと妹のナタリー、4人の家族が過ごすある朝の光景でミュージカルは始まります。
いかにも幸せそうな家族に見えるのですが、舞台の上で少しづつ、ダイアナは幻覚を見たり、挙動がおかしくなり、しまいには自殺未遂をおかします。
そのうち、ダイアナが赤ん坊の時に病気で子供(ゲイブ)を失ってから精神が分裂し、彼女は死んだ息子の幻影とともに生きているということがわかる台詞があり、観客が皆、息をのむのです。会場の雰囲気ががらりと変わったのが分かりましたよ。
この演出が素晴らしかった。確かに開幕から劇の舞台上で、ゲイブが父のダンや妹のナタリーと話すシーンは無かっのですよね。
ゲイブはダイアナの心の中では大きく成長し、大学生ぐらいになっています。
ダイアナはこの病気に立ち向かおうと、精神科医にかかりますが、薬を使った療法もあまり効果が出ずに、ドクターショッピングした挙句、とうとう夫のダンとともに、ECT(Electroconvulsive therapy 電気痙攣療法)を選択する決心をします。
その結果、それまでの記憶を失ってしまい、自分の娘が誰かもわからなくなってしまうのです。
アーネスト・ヘミングウェイは、1961年 メニンガークリニックでECTの直後に、記憶を失ったことを苦に自殺したと言われています。
また、僕が好きな怪優ジャック・ニコルソンが演じた『カッコーの巣の上で』のランドル・パトリック・マクマーフィーも、刑務所に入リたくないがために、精神病患者のふりをして精神病院に入院し、薬の療法は拒否できたものの、このECT療法を期に、最終的にロボトミー手術を受けさせられて廃人になってしまいました。
ECT療法の適応については諸説ありますが、これに代わる強力な療法が存在しないのも事実です。僕も都立病院の麻酔科にいた時に、修正型ECT療法(筋肉弛緩剤を使用して麻酔をかけた後にECTをかけ、実際に痙攣をおこさないようにする方法)の麻酔を担当したことがありました。予後はとても良かったと精神科の先生から聞きましたよ。
劇中ではダイアナは少しづつ記憶を取り戻しますが、それと同時にゲイブの存在も思い出します。
一見すると、綺麗で明るいアメリカ家庭の主婦であるダイアナの next to nomal の物語。
途中4人の家族と、ナタリーの彼と精神科医のわずか6人の劇でしたが、それぞれが織りなすコーラスが本当に素晴らしくて、会場は総立ちのオヴェーションで応えていました。
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