■IMCAS CHINA in Shanghai 2012 ⑫ 大スズメバチ アナフィラキシーショック トワイライト上海
おはようございます。
今日8月28日もクリニックFの診療日です。
実は、今日の早朝、自宅の窓から一匹のスズメバチが飛び込んできました。
あまりの大きな羽音に、セミが入ってきたのかと思うほど。
スズメバチは、黒い服や香料に反応します。このとき僕は黒いT-シャツを着ていたのでまずは白い服に着替えました。その上で虫捕り網と殺虫剤で対峙しましたが、捕獲?してみると、こちら、4cm大の収穫物です。
しかし、こうして捕らえた後まじまじと観察してみると、獰猛かつ空力や流速動態に優れた見事な躯体です。
前にも後ろにも自在に飛べそうですね。
実は日本では、スズメバチによるアナフィラキシーショックで、毎年20人程度の人が亡くなっているのをご存知ですか?
これは、クマなどに襲われて命を落とす人よりもはるかに多い数。
もう20年ちかく前ですが、僕の年の医師国家試験で、蜂の問題が出たので良く覚えているのです。
特にスズメバチの毒は、ペプチドや神経毒を含む、様々な微量の生理活性物質の複雑な混合物であり、別名「毒のカクテル」とも言われています。
アナフィラキシーショックをおこしやすいのです。
ここでいう「ショック」は医学用語。
通常使われる精神的なショックとは意味が違います。
アナフィラキシーショックは、好塩基球表面のIgEがアレルゲンと結合して活性化し、複雑なカスケードの後、マスト細胞という免疫系の細胞を脱顆粒させるのですが、顆粒内の数々の化学物質が放出されると全身の毛細血管拡張を引き起こすため、体内の必要な場所に血が回らなくなることをさします。
わかりやすく言うと、血圧が下がって、死にそうになること。
生命の危険がある状態のひとつですので、決して甘く見てはいけません。
ちなみに僕の医学博士論文のテーマの一つが、皮下の免疫系の司令塔である「マスト細胞」についてでした。
医学部大学院にいたときに英文論文を何報も書きましたので、医師の中でも免疫の知識はある方だと思います。
特に、二度目に同じ種類の蜂に刺されると起こりやすくなりますので、たとえ子供のときであっても過去に刺されたことがある人は要注意です。
外で出会った時には静かに立ちされば良いですが、家の中に入られたのなら困りますよね。
まず、家に入ってきたのが一匹かどうか、観察したほうが良いです。
これは、スズメバチが基本的には集団で移動する蜂であること。
スズメバチは左右の大顎を噛み合わせて打ち鳴らし、「カチカチ」という警戒音を出し威嚇してきますが、これはほかの仲間を呼ぶ手段です。
さらに、攻撃を始めたときの、この鋭いお尻の毒針が見えますか?
この針は、鋸状の細かい刃が密生した2枚の尖針が刺針の外側を覆うという構造をしていて、この尖針が交互に動くことにより、コラーゲン線維を切断しながら皮膚に食い込みます。
ミツバチの様に一度刺したら外れてしまっておしまいではなく、毒液が残っている限り、何度も刺すことができます。
さらに、毒液は刺して注入するだけでなく、空中から散布することもあります。
危険を察知して散布された毒液は警報フェロモンの働きをし、仲間を集めて興奮させるため、集団で襲ってくることもあります。
見えないところに隠れていたスズメバチから、集団で襲われる可能性があるのです。
恐ろしいですよね。
さらに、一発で仕留める方法を考えること。
はたき落とそうとすると、急所を外した場合、かえってハチが興奮することもあり、危険です。
殺虫剤を利用しても、弱って息絶えるまでに長時間かかる上に、激しく飛び回るので注意が必要です。
そんな知識もありましたが、実際に今朝、網で捕まえたときには「カチカチ」と威嚇され、網の上から殺虫剤をかけても、羽音激しく飛び回りましたので、怖いこと怖いこと。
息絶えるまで時間がかかりましたが、何より無事でよかったです。
ちょっと前置きが長くなってしまったのですが、先月招待講演で訪れた上海でのブログを上げてしまおうと思います。
あと数回お付き合いください。
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上海の夕暮れ
数々の高層ビルに灯りが点ります。
近未来都市のようですね。
僕もセルフタイマーで一枚写真を撮りました。
最後の夜は、僕を今回、上海に招待してくれた米国パロマの首脳陣と会食でした。
河沿いのレストラン。
この日は低いところから、夜景を堪能しましたよ。
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