フラクセル マドンナリフト フラクショナルレーザー機器の適切なパワー設定
おはようございます。引き続き今日も朝から晴天に恵まれましたね。
今日6月4日(火)もクリニックFの診療日です。
このところ患者さんから続けて同じご質問がありましたので、レーザーのパワーについてすこし今日は書いてみたいと思います。
レーザーの照射をするとき、パワーをあげる方が効果が上がるのでは?
と考えている患者さんは依然多いようで、例えば施術中にぎりぎりまで我慢できるのでパワーを目一杯上げてほしい、と実際おっしゃる患者さんも少なからずいらっしゃいます。
サーマクールなどのRF(高周波)機器は、パワーを上げるほうが効果が上がる、というのはある程度真実であり、表皮に火傷をつくらない限り、ハイパワーで照射したほうが良い結果が得られるでしょう。
しかしながら、レーザーにもその理論が当てはまるとは限りません。
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まず大前提としてレーザーには
① 波長
② パルス幅
③ フルレンス(照射強)
④ 照射直径
⑤ 皮膚温度
という5つのパラメーターがあります。
これら5つの設定がその患者さんにとって最適であれば、より効果の高い治療ができることになります。
ここ数年突出して人気のある「フラクショナルレーザー」の場合は、これに
⑥ 照射密度
という新たなパラメーターが加わります。
これらの組み合わせのパターンは、それこそ無限大。医師のセンスと経験が問われるところです。
医師の方はこれらすべてに気を配り、バランスを見極めながら照射しなければなりません。
この前提を踏まえた上で、今回はフラクショナルレーザーについて考えてみましょう。
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フラクショナルレーザーはパワーだけに依存しない代表的な機器です。
その理由をいくつか説明しますね。
まずは、生物学的な話。
例えばここ数年に出てきた英文論文では、フラクショナルレーザー施術後に、組織再構築が行われる際には、皮下のサイトカインが誘導されることが報告されています。
これらのサイトカインは、強いパワーで照射された場合、むしろ発生が抑えられるという研究発表が多いのです。
ちなみに創傷治癒過程に関与するサイトカインとその主な機能 サイトカインには、以下の様々なものがあります。
その中の一部を挙げていきますと
○TGF-β=トランスフォーミング増殖因子β
・マトリックスタンパク質(コラーゲンなど)を刺激する
・プロテアーゼ産生を阻害する
・有糸分裂を促す
・マクロファージおよび顆粒球の走化性を活性化する
・向炎症性サイトカイン(インターロイキン1、インターロイキン6 および腫瘍壊死因子α)を放出する
○bFGF =塩基性線維芽細胞増殖因子
・血管形成活性および有糸分裂誘発活性
・内皮細胞の遊走および増殖の初期刺激を与える
・コラーゲン産生を阻害し、コラーゲン束の攻勢を助長する
○EGF=内皮増殖因子
・再上皮化活性(すなわち、角質細胞増殖、角質細胞周辺化、過剰増殖創傷表皮など)
○PDGF=血小板由来増殖因子
・単球、マクロファージおよび好中球に対する走化活性
・in vitro での線維芽細胞および平滑筋細胞有糸分裂誘発活性に対する
・線維芽細胞を刺激して、細胞外マトリックスを産生し、コラーゲンマトリックスを引き締める
○VEGF=血管内皮増殖因子
・脈管形成及び血管新生を調節する
○ビメンチン
・線維芽細胞タンパク質:マトリックスおよび細胞間物質の産生に関与
・・・といったものがあります。
これらが複雑に絡み合って肌を再生しているのですから、高出力によってこれらサイトカインの生成が減ってしまっては肌の再構築などできませんよね。
皮下にダメージは与えても、生体の反応を考えると元に戻る以上のパワーで照射されてしまっては、意味がないということです。
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もう一点は工学的、物理学的な話。
照射密度についてです。
一般にフラクショナルレーザーを照射すると、パワーを上げればあげるほど、深達度は深くなります。
しかしながら、安価な機種の中にはビームの焦点がずれていたり、精度が悪いものもあって、単にエネルギーが分散し、ヒートショックゾーン(熱変性)を幅広くしてしまうだけの機種があるのは事実です。
フラクショナルレーザー機器間の性能違いについては、僕も英文論文やこのブログで述べてきたつもりです。
また、機種によってはパワーが上がるとやけどを防ぐために、照射密度が荒く設定されなおすものもあります。
実際にビーム照射径70µm前後だと、24時間以内に肌の再上皮化が行われますので、非常に適切だと思いますが、オーバーパワーで照射してしまうと、それ以上にダウンタイムがかかる。
さらに深いニキビ跡を治したいのか、毛穴を治したいのか、肌のきめやテクスチャーを治したいのかによって、それに適した深さや照射密度がありますので、対応してパワーを変える必要があることがわかりますよね。
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こうしたパラメーター設定は、きわめて職人技的で、レーザーを実際に照射した医師の経験によってしか得られないものだと思います。
そして、一人一人の肌を診察し、より治療効果が上がるように機器を選び、一人一人照射方法を変えながら工夫し、結果を出すのが、この仕事の醍醐味の一つでもあるのです。
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