●2014年5月 11th EADV Symposium in Belgrade,Servia⑤ フェラーリから国際レーシングドライビングライセンス
ここからEADVが開催されるセルビアに向かいます。
その前に今回参加したフェラーリドライビングスクール Pirotaの話をすこし。
車としての性能はもちろん、どんな時代にあってもその価格を絶対に下げない戦略や広告を全く打たないマーケティング、ブランドの維持力など、フェラーリの唯一無二の存在感にいつも憧れてきました。
工学部の大学院に通うようになって益々その思いは募るようになりました。
ハイテクノロジーという言葉の持つ意味を、以前よりも深く理解できるようになったのでしょう。
いくつもの精密機器の中で、車という機器を取り巻く市場はある意味特殊なものがあります。
技術はもちろん、制約があるからこそ生まれる独自のデザイン、それを繰るドライバーとドライブする環境やルール、支えるメカニック他スタッフ・・・様々な要素がすべて揃うことで産まれ得る可能性と見える景色は、他の精密機器の世界では見ることのできないものなのではないでしょうか。
そんな車の王国の中で、フェラーリは常にずば抜けて煌めいてきました。
車の性能だけを考えれば、フェラーリを凌ぐものは過去にあったことでしょう。企業としてもより優秀なところはあり、実際絶望の縁に立ちかけたこともありましたよね。
それでも、あの誰も真似のできない特別な色の車をいつだって大衆が求め支持してきた。
フェラーリがフェラーリたる所以を肌で感じられる場所は限られています。
そんな中、数年前からこちらのドライビングスクールに参加しています。
スクールには「Sports」、「Advance」、「Evoluzione」、「Challenge」・・・と4つのコースがあり、格下のコースを修了してディプロマをもらえないと次に進むことができません。
僕は一昨年にスポーツコースを、昨年にアドバンスコースを修了しました。
残すはエボリューションとチャレンジですが、通常エボリューションコースとチャレンジコースはそれぞれ2日間 合計4日間のコース。現在の僕のスケジュールでは4日身体を空けるというのはなかなか厳しい現状があり、今年は見送る予定でした。
しかしながら、この二つを組み合わせて3日間で修了できるスペシャルコースが年に二回だけあり、そのうちの一つが日程的にセルビアで開催されるEADVと組み合わせられることがわかり、これなら行けるかもしれないと申し込みをしたのです。
ところがフェラーリ社で規定の人数が集まらなかったため、直前に選択を迫られます。
日程を後日に変更するか。または、座学を一日、翌日に丸1日サーキットと10名弱のスタッフを僕だけのために貸し切るので、一日で80以上のラップをこなし、国際C級レーシングライセンスを発行する試験を同日に受けるという、実質2日コースに短縮して受講するか。
飛行機がすでにもう動かせないタイミングでの連絡だったので、僕はやむなく後者を選びましたが、あとでわかったことは本来ならば4日間かかるはずのコースを、個人レッスンにして2日で終わらせるというのは、実はフェラーリ社でも初めての試みだったそうです。
二つのコースを無事修了し、筆記および実技試験に合格すれば国際レーシングライセンスが手に入ることとなるのです。
体力も気力も必要なこのコース。
万全を期して現地入りしたいところでしたが、出国ぎりぎりまで様々な案件の処理と検討に終われ、また乗り継ぎの難しさもあり、欧州に入ってからも打ち合わせやメール対応などあまり時間の余裕もないような状況でしたので、体に疲労感を残したまま濃密な二日間に入ることとなりました。
その二日間について詳しくはまた後日書いていこうと思いますが、とりあえず最終日の御報告を。
このコースに参加する人は、自国でもレース経験がある様な人ばかり、それでも4日間かけてのコースに参加しても基準タイムが出ずに、参加者の内3割はライセンスが取れないのだそうです。
この日一日だけのサーキット走行日。
朝から車を458、458スペチアーレ、458チャレンジと三台乗り換えましたが、チャレンジのカーブの速さに感覚がついてゆけません。
C級ライセンス発行のためのコースの基準タイムは1分16秒215。
時差ぼけも暑さもあって、最後のテストまでに出た最高タイムは、1分16秒823。
40セッションで基準タイムが出ない。
疲れも限界に来ています。
数日あれば車にもスピードにも慣れるのですが、さすがにサーキット走行が一日では僕にとってはまだ無理があるなと、国際ライセンスの取得はこの時点で半ば諦めかけていました。
一方で、今日一日僕のために付き合ってくれている赤い服を着た10人近いスタッフのためにも頑張らなければと、最後8周の実技テストのために、集中力を高めて臨みます。
規定コースを終え、まずは筆記テスト。
前日時差ぼけの中で勉強した英語の筆記試験。試験終了後、オフィシャルの試験官から採点うけています。
こちらはなんとか合格のよう。
そして、結果は最後の実技テストでという事になりました。
精神集中してマシンに乗り込み、テストの周には最初から1分16秒台がコンスタントに出るように。さらに周回を重ねるごとに徐々にタイムが縮み、基準値を満たすタイムが・・・。
そして、最後の周回でなんと!
1分15秒台前半のファステストラップが出たのです。
国際レーシングドライバー資格が確定した瞬間でした。
火事場のなんとか・・・でしょうか(笑)。
夢に見た国際レーシングドライビングライセンスをフェラーリで取得したのです。
写真を見ると、全力を出し切って、憔悴していますね。
しかしながら、これは本当に感無量でしたよ。
今回最高のバディとの、お疲れさま食事会。
これ以上ない美酒でした。
コースディレクターでもあり、F1ミナルディフェラーリのテストドライバーでもあった、Andrea Piccini。
二日に短縮されたコースにほぼすべて付き合ってくれました。
彼の助けなくしてこの結果はあり得ませんでした。
そして改めて僕はここで貴重なビジネスのヒントを多く得ました。
きっと帰国後にそれらは生きて再構築され、前へ前へと動き出すことと思います。
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