●2014年夏 ボディのための医療機器 その① 脂肪吸引と機器総論
今年は痩身とそれに関連する機器についての本を出版させて頂く機会に恵まれたこともあり、メディアの方や患者さんからご質問を頂いたり、ご取材を受けたりすることが増えました。
とはいえ、クリニックFではクリニック自体のコンセプトや方向性、そして規模の問題もあり、ボディの施術をメニューに加えて前面に出すのはなかなか難しい現状があります。
そのため、こうした施術や治療に興味を持たれる同業のドクターに情報をシェアしたり、アドバイスをさせて頂いたりというスタンスで、現在は関わっています。
一方、僕が活動を主にしている学会やコンベンション、大学での研究室などに目を向けますと、ボディのための医療機器もここへきて多くが出揃ってきましたので、これらの機器についてブログ上で総論する良いタイミングだと思っていました。
同業者の方には、日々の診療で本当にお忙しくされている中学会に参加されることすらままならなかったり、遠方で実際お目にかかったりするチャンスがなかなかなく、ブログでの情報を楽しみにしてくださっている方もおいでになるようですので(ありがたいことです!)、限られた空間でのシェアリングにはなってしまいますが、忘備録も兼ねて2014年夏の段階での情報を、ここから数回に分けて整理しながら、ボディの機器についての総論をまとめておきたいと思います。
しばしおつきあいください。
※※※
まず大前提として、メディカル/エステティックに関わらず、ボディの施術というと「痩身」「体重減少」と直結される方が多くいらっしゃると思います。
しかしながら、医学、アンチエイジングの視点からいえば、この言い方には多少偏りがあり、実際ウェルネスを考えていくとそのとらえ方は大きく異なることに気づくはずです。
医療的に美しいボディを作ることを指すのに、英語ではBody Contouring(ボディーコントゥーリング)という言葉があります。
「痩身」ではなく、「(美しく曲線を作るように)輪郭を作る」
実際の体を彫刻する、Real Body sculpturing(リアル ボディ スクラプチャリング)と表現する医師もいます。
これらの施術を一手に担ってきたのは、米国では形成外科医や美容外科医で、脂肪吸引という手術を用いてきました。
この施術は、脂肪を減らしたい場所に管(脂肪吸引管、カニューレ)を挿入し、陰圧で吸引、除去していくものでしたが、局所麻酔薬と止血材の過剰投与や、アナフィラキシーショックによる心停止や、脂肪塞栓などによる、血栓症や呼吸不全などの死に関わる事故も報告されるようになりました。
ご存知のことと思いますが、医療事故と医療ミスは似て非なるもの。
医療ミスは人的なミスが重なって起こりますが、医療事故は通常の医療を行っていても一定の確立で起きてしまうもの。
我々医師は、こうした脂肪吸引の医療事故を防ぐために努力はしてきましたが、限界はありましたね。
脂肪吸引は、その後、体内式超音波、体外式超音波、レーザーアシスト、ジェット水流によるアシスト、ベイザー超音波などの技術が付加され現在に至っています。
また、脂肪吸引以外には、
■痩身メソセラピー(フォスファジディチルコリン・αリポ酸など)
■カーボメッド(炭酸ガスを針により注入する)
■内服抗肥満薬 (ゼニカル・サノレックスなどの体重減少薬)
などが挙げられます。
一方、機器による痩身は、米国市場では、2005年に設立され、脂肪組織を氷結によって溶解させる技術を開発してきた会社、Zelitiq(ゼルティック) 社によって、一気に市場が開けました。
1.温度を低下させて脂肪細胞のアポトーシスを図る
という発想はあまりありませんでしたので
〇氷結(クライオ)
は、衝撃をもって市場に受け入れられました。
反対に、
2.温度を上昇させて脂肪細胞のアポトーシスを図る
機種は比較的医師には理解しやすいと思います。
脂肪に対し、温度を変化させるのためには、以下のような物理的な知識が必要です。
この脂肪組織の温度上昇のために、現状利用されているエネルギーソースとしては
〇レーザー
〇RF(ラジオ波)
〇超音波(キャビテーション)
〇HIFU(高焦点型超音波)
〇EMS(電気的筋刺激)
〇パルス電磁場
があります。
こうした熱による組織の変化には、以下のような生理学的根拠があります。
さらに上梓されている多くの論文を分類すると、この修復過程には大きく二つのシステムが関わっています。
とはいえ、米国の現状の機器痩身の市場は、70%がゼルティックです。
痩身市場の本場である米国で、圧倒的なシェアと言えますね。
次回は、ゼルティックについて総論したいと思います。
世界最先端のレーザー情報がわかる
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